【本】死神の精度(伊坂幸太郎) 文藝春秋 (2008)

 作者がブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』に影響されて書いた、と知って早速読みはじめた。死神の行動がすごく面白くて、いや死神本人はあくまでも真面目なんだけど、通勤電車で人前なのに笑い出しちゃった。
 ブラッド・ピットの出てくる映画『ジョー・ブラックをよろしく』を思い出した。ぎこちなく人間のふりをしている死神が少しずつ人間界になじんでゆく話でもあるので。

 死神は一週間後に死を予定されている人間のところへ派遣され、死の執行の可否を調査する。人間界の大組織と同様に、死神達もまた何かの組織の駒に過ぎず、限定的な情報だけ与えられて現地へ赴く。調査の結果、予定通り死なせる場合は、死ぬところを見届けるまでが仕事だ。ちなみに死神が取り扱う人間の死は、事故死や殺人であって、病死や自殺は対象外となる。
 死神たちにも個性があり、ろくすっぽ調査をせずに上へ「可」を報告する輩もいるようだが、我らの主人公はじっくり丁寧に調査する。彼が仕事をするときはなぜかいつも悪天候。だから一回も太陽を見たことがない。
 死神達は「ミュージック」が大好きで、「聴いているだけで、私は幸せになる」。深夜のCDショップでいつまでもいつまでもいつまでも視聴しているのは死神の一人かもしれない。お気に入りとして、バッハのチェロ無伴奏組曲と、ストーンズのブラウンシュガーの曲名がでてくる。

 影響と言われるのは『巨匠とマルガリータ』の大悪魔・ヴォランド、キリストの処刑さえ目撃した永遠の存在で、これが死神につながってゆくのだろう。ヴォランドに比べると、我らの死神は職人気質で生真面目だ。1930年代のモスクワでサバトを開いたヴォランドを日本に連れてくるとこうなる、となんかすごく納得した。
 

 Wikiによると、この作品は2008年に映画化されている近々DVDで観てみよう。続編に『死神の浮力』がある